★老化と病気の関係、なぜ食生活が重要なのか?
すべての生き物(植物も動物も)は呼吸で取り入れた酸素を使って生命活動をしています。生きるためには酸素は必要不可欠ですが、どうしても酸素の一部が活性酸素となり細胞を傷つけてしまうのです。これが細胞の酸化と呼ばれるものです。老化とは活性酸素による酸化現象が原因の1つとなっています。
食べ物も元々は生き物であり、植物もそうです。例えばリンゴの断面が空気(酸素)に触れたときに黄色く変色するのも目に見える急速な酸化の1つです。(図1)
古くなった油の臭いや味が変化するのも酸化です。つまり劣化≒酸化≒老化とほぼ同じ意味で考えて大丈夫です。では、私たちの身体がすぐにリンゴの断面のように酸化していかないのはなぜでしょうか?
生物にはみんな老化に負けないような防御機能が備わっています。もちろん人も同じで、様々な抗酸化酵素が老化を防いでいます。リンゴの皮にも抗酸化酵素の働きがあるので断面だけが酸化します。
ところが図2のように30代40代からそのような老化を防ぐ酵素がどんどん減っていくことがわかっています。20代くらいまでは守る力が強いので、多少荒れた生活をしても身体に影響は出ませんが、30代40代ころから生活スタイルによって見た目や体力で実年齢との差が生まれてくるのはそのためです。
そして様々な病気は老化が強く関わっています。生まれつきの遺伝子疾患などを除いて10代で心筋梗塞、脳梗塞、認知症、悪性腫瘍(癌)になることはまずありませんが、高齢の方ではよく聞く病気です。なぜなら血管が老化(=劣化)するから詰まりやすくなり、脳細胞が老化するから認知症になります。癌細胞も老化した細胞から発生してきます。
免疫力ももちろん老化と関連しています。10代、20代は風邪や肺炎になってもすぐ治ります。老化をしていくと免疫力が低下して風邪などの治りが悪くなるのです。高齢者の方が新型コロナで重症化するのは免疫力の低下です。つまり老化を防止することは様々な病気や感染症を減らすことになるのです。
私たちが特に気になっている認知症の予防にもつながります。今現在の医学では、認知症になった人に対して進行を遅らせる程度の薬しかなく、認知症を治す薬や予防する薬はありません。しかし食事では認知症予防効果が期待できます。例えばアルツハイマー型認知症では亜鉛やビタミンD濃度が低いことが大規模研究からわかっています。
老化を防ぐ抗酸化酵素が機能するにはビタミン・ミネラルが不可欠です。先ほどの認知症患者さんは亜鉛やビタミンD濃度が低い例もそれを表しています。抗酸化酵素を増やす薬は今のところ存在しません。だからこそ“老化を防ぐ力”を高めるためにも、食生活を考えることがとても重要なのです。
よく言われるアンチエイジングとは日本語で老化防止のことで 図3 のような状態を目指すことです。
人生100年時代と言われている中、食生活の改善は何歳からでも大きな意味があります。
もちろん年齢や状態など個々によって必要な栄養量は変わってきます。自分に合った食生活を変えていくことが大切です。
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